T3 BOOK MARCHÉ 2026 PASSAGES


PASSAGESでは、日本ではまだ出会う機会の少ない出版物を通して、本が土地を越えて人から人へと手渡されていく道のりと、その背景にある出版文化を紹介します。


Vacilando Bookshop|Bangkok

2017年にバンコクでスタートしたVacilando Bookshopは、写真集を販売するだけでなく、読書会やブックトーク、オープンスタジオなどを通して、写真家や読者が継続的に集まる場所をつくってきました。今回のT3 BOOK MARCHÉでは、オーナーのWithit Chanthamarit自身が選書し、タイを中心に、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシアへと広がる現在の東南アジアの写真出版を日本で紹介します。なかでも注目したいのは、Vacilandoが共同出版し、2026年8月に刊行されたばかりのChantana Tiprachart『Arc of the Sun』。そのほか、Chalit Saphapakが故郷スパンブリーの土地と水を見つめる『Sun Embraces the Soil』『WATER』、ミャンマー・カレンニー州での日記と前線の写真を収めたKhin Sandar Nyunt『Purple Flowers Will Bloom』など、個人の生活から土地、政治、移動へと視線が広がる本が並びます。





Kaph Books|Beirut

ベイルートを拠点とするKaph Booksからは、レバノンをはじめとするアラブ世界の写真、都市、建築、アーカイブにまつわる出版物を紹介します。Akram Zaatari『Against Photography: An Annotated History of the Arab Image Foundation』は、写真を保存されたイメージとしてだけではなく、触れられ、所有され、失われ、ときには破壊されながら残っていく「物」として捉え直す一冊。Fouad Elkoury『Passing Time』では、5万点に及ぶ自身のアーカイブから、1960年から2017年までのレバノンを写した160点を再編集しています。また、Rania Matar『Where Do I Go?』は、内戦中にレバノンを離れた自身の経験を重ねながら、現在を生きる女性たちを撮影した作品です。
ニュースや政治を通して目にすることの多いこの地域を、写真集を通して見ると、そこにはもっと個人的な記憶や日常、長い時間の積み重なりがあります。



La Maison de Z|Shanghai / Paris

上海とパリを拠点に、写真集やアーティストブックを手がけるLa Maison de Z。T3 BOOK MARCHÉでは、中国の現代写真を中心としたセレクションとともに、写真家Michele I. Araziの新刊『Land Of』を紹介します。中国の作家による出版物には、古写真に架空の日付と自身の記憶を重ね、歴史とフィクションを行き来するLi Lang『1974』や、Cai Dongdongが収集した約60万枚の写真から、異なる時代に撮影されたよく似た人物の肖像を組み合わせた作品などが並びます。また、Wang Juyan『Uncharted+』は、実在する風景とデジタル・コラージュを交えながら、上空から土地を捉える視線について考察する一冊など。
今回紹介する新刊『Land Of』は、Araziが4年にわたってアメリカ各地の都市部から離れた地域に滞在し、現地の人々と生活をともにしながら制作したドキュメンタリー・プロジェクトです。写真、音声、短い映像を記録しながら、政治的な対立からアメリカを語るのではなく、そこで出会った人々の日常と、ともに過ごした時間をたどります。写真集では、現地で録音した音声をAIを介してテキストへと展開し、写真とともに編むことで、記録を一冊の本へと組み立てています。
*10月18日にはMichele I. Arazi本人も来場。 美術家・写真家の苅部太郎とのトーク「What Do We Think We See?」では、『Land Of』を出発点に、AIによって写真を取り巻く環境が大きく変わるなか、私たちはイメージの何を見て、何を記録として信じているのかを考えます。